ポルノグラフィティ小説「横浜リリー」 横浜のホテルで灯の灯を一人見下ろす。女は細い指でおざなりのキスの名残を拭う。 女の名は・・・いや、その女は恋人にリリーと呼ばれていた。「港町に住む女にお似合い だ」と。その恋人はキザな男だったが暴力団員だった。「本当の男になりたい」と体に傷ば かり作っていた。リリーはそんな男の全てを愛した。男もリリーを本当に愛していた。リリ ーはよくこう言った。 「仁義なんてはやらない言葉、海に投げ捨ててよ。」 そんなある日、リリーの恐れていたことが起こった。暴力団の本部から悪い知らせが来 た。男は険しい顔をした。リリーに止める手立てはなかった。男は行かなければならなか った。誰かを殺しに。男はおざなりのキスをして部屋を出た。 「じゃあ、また。」 「どうせ私の事を不幸にするなら、他にいい女ができたとか、そんな泣けるものにして。」 とリリーは言いたかったが、男が部屋のドアを出るときに代わりに口をついで出た言葉は 「その『じゃあ、また。』は嘘じゃ許さないから!」 今まで、どんな嘘だって見て見ぬしてきたリリーだったが。 数日後テレビで暴力団に関するニュースをやっていた。 「多分あなたの事ね。私なんか忘れちゃって。震えながら泣いて泣いて、引き金を握って るのかしら・・・」 横浜のリリーは今、違う街で暮らしている。誰も彼女のことをリリーとは呼ばない遠い街で。 .。.:*・゚+.。.:*・゚+.。.:*・゚+.。.:*・゚+.。.:*・゚+.。.:*・゚+.。.:*・゚+.。.:*・゚+.。.:*・゚+.。.:*・゚+ 知る人のみぞ知る物語
by virulentseren
| 2007-02-24 16:35
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